柚楽弥衣『惑星JUWEL』Interview

2015年7月、新居昭乃が柚楽弥衣に『惑星JUWEL』についてインタビューしました。
曲ごとのエピソードと、最後にトータルなことを聞いています。
前半はこちらのサイト、後半はbiosphereサイトにて1曲ずつご紹介していきます。

M01_Elysion
M02_惑星JEWEL
M03_GILGAMESH
M04_あなたの心に降る雪
M05_Eternal
M06_CORAZON

(以下 や=柚楽弥衣 ア=新居昭乃)

M01_Elysion

++アルバム1曲目の『Elysion』 まさに『惑星JUWEL Beyond the Galaxy』の幕開けにふさわしい、まるで組曲のような壮大な楽曲です。音にいざなわれて辿り着く扉の向こうには、自分でもまだ知らない自分自身の内宇宙が広がっている…。ヤヨイちゃんの声がどこまでも遠くへ、深くへ、連れて行ってくれます。 この曲、元は『廃園の庭』というタイトルだったとのこと。話は突然、目眩の体験からはじまります。 Akino++


ア「まず1曲め、Elysion。この曲作ったきっかけみたいなものはある?」

や「めまいで倒れて動けなくなった時に、自分の身体からまっすぐ歩く機能が失われてしまったので、一旦。そういう身体の中の状態っていうのを夢で見たことがあって。で、もう使うことができない神経があるというのがわかって、それが身体のいたるところにあるんだよね。廃園になってる場所っていうか。進化する過程でいらない部分を人間はこう、身体の中にいっぱい残してるっていうか。たとえばもう尻尾がないわけだし。いろんな脳の分野、いろんな島が何のためにあるかもわかんない。今は使われてないけど、もしかして私たちが滅ぶ時に新たな生命体に進化するために必要な器官かもしれないし、そういう廃園がいっぱいあって、私はこの曲最初は『廃園の風』っていうタイトルでライブでやっていたんだけど、その廃園の扉が、『秘密の花園』っていう童話みたいに扉が開く時があって、そういう必要ができた時に開かれるというか、そういうことでできた曲」

ア「『か〜ぜが〜』って、そこからできた感じ?」

や「そうそう、そのメロディーから。 誰も知らない状態になってる場所に足を踏み入れて、そこに封印されている、シールドしてあるものを解き放った時に『夢が眠っているその庭。閉ざされた扉が求めし者の前に開く』。 必要があった時にそのシールドが外れる。そういう感じ」

ア「イントロの部分ていうのは、その扉にたどり着くまでの過程だったりするのかな?」

や「あれはね、有紀(※1)さんが勝手に作ってくれたというか」

ア「そうなんだ!」

や「まったく私はなんのオーダーもしないで、うん」

ア「じゃぁ、あの壮大なイントロは有紀さんが勝手に作ってくれたの?」

や「そうぜんぶ。 有紀さん、ジュエルの収録曲のアレンジお願いしてから、私のHPから私が作ってた宇宙の画像とかダウンロードしてくれたり、あといろいろユニコーンの画像とか『弥衣さんの世界だなと思って』っていっぱいお部屋の壁に貼って、アレンジしてくれてて。 遊びに行った時にすごい綺麗な画像や写真がキーボードの前とかに貼ってあったから、私のHPのクリスタルと惑星を組み合わせたジュエルの画像とかも貼ってあって、「あ、ダウンロードしてくれて飾ってくれてるんですか?」って言ったら、『うん、こういうイメージかな〜と思って』って」

ア「そうやってイメージを広げて作ってくれたんだ」

や「ホントに有紀さんがElysionにしてくれたっていうか。はじめもっと小さな曲だったし」

ア「エリュシオンって、どういう意味?」

や「エーリュシオンとも言うんだけど、ギリシャ語で楽園、勇敢に戦った英雄たちが死後行くことができる楽園とされてるんだけど。だから私は身体の中にあるナゾな器官、たとえば盲腸しかり、免疫もそうだし、過去にきっと使われたことがあるんだろうなぁって思ってて、私の中でそういう存在って英雄的なものっていうか。英雄な部分ってみんな持ってるから英雄に惹かれると思うんだよね、ヒーロー的ななものってみんな眠っていて。だってお父さんとかもさ、家族を守るために英雄になる時あるわけじゃん。それが必要な時になると出てくるというか。だから英雄たちが死後、特別な楽園に行く必要があるのは、そういうことなんだろうなって。ホントに死ぬわけじゃなくて、必要な時に戻ってくるために、、」

ア「楽園にいると」

や「楽園にいると。でもだからこそ生きてる間に燃焼して、燃焼ってなかなかできなくて、発揮するってことだと思うんだけど、燃焼できるようになるまでにはすごい鍛錬が必要だったりとか、オリンピックとか見ててもそうだけどさ、その技を、自分の素晴らしさを発揮するのって大変なことなんだよね。だから英雄って言われるような存在っていうのは、そこまで自分自身を高めるために、努力なり、何かを継続して来たりとか、あるいは気がついたりとか、なんでもいいんだけど、そういうものなのかなぁって。それが『廃園の風』っていうものだったのがElysionになって。で、まったく何も注文しなかったんだけどユキさんがどんどんドラマチックにしてくれて」

ア「じゃぁバイオリンの栗原ディクソン麻里さんも有紀さんが頼んでくれた?」

や「そうそう。有紀さんが全部。アレンジは完全に有紀さんが。それを生で。ギターのラインも全部有紀さんが。ギターはわたしからの提案で名越くん(※2)なんだけど、有紀さんは逆に名越くんに自由にやってほしいというところもあったんだと思うけど、名越くんもアレンジすごいねって言ってて、この世界を壊してはいけないと思ったのか、完全にコピーしてくれて(笑)」

ア「ギターも最初打ち込みで入ってたの?」

や「そう、最初は打ち込みだったんだけど、もちろん生で全部弾いてくれたから、それがすごく、こう、生命力を持ったということになったんだけど。だからすごいなぁって、有紀さんは」

ア「すごいね!!有紀さん」

や「有紀さんすごいんですよ。私はああしてほしいとかこうしてほしいとか一切言ってない」

ア「そうだったんだ!ただ歌っただけなんだ…」

や「コーラスは、有紀さんが作ってきてくれたトラックにコーラスのっけて返すと、今度は『ここから転調したもので歌ってもらえますか?』っていうのが来て、コーラス転調したりとか。 だからすごい楽しかったですねー。打ち合わせゼロ!」

ア「素晴らしい〜!」


※1 土田有紀 パビリオンやプラネタリウム、企業CMなど、美しく壮大な作風で活躍している美人作曲家。十年以上、柚楽は様々な歌唱を担当。今回、自由にやってくれた有紀さんの世界を聴きたい!というオファーに応え、Elysionではアレンジとプロデュースを担当。

※2 名越由貴夫 Co/SS/gZ(コーパス・グラインダーズ)のギタリストであるほか、アリーナクラスのアーティストのサポートでも絶賛されているスーパーギタリスト。柚楽が十代の時、二個めのバンド「VASILISK」の中心メンバーでドラム、ギター、などを担当。その後、二十代はじめくらいまで、柚楽のバンドやソロ活動でもギターを担当、改めてギター弾いてもらうのは20年ぶりくらい。

introduced by Yayoi


M02_惑星JEWEL

++私から見るとふだんのヤヨイちゃんは、この世界の、今現在のすべての瞬間を、ふかふかのクッションのような心と突き抜けるような透明な魂をもって、全力で楽しもうとしているように見えます。この曲『惑星JEWEL』はそんなヤヨイちゃん自身のテーマソングのような存在かなと感じています。 Akino++


ア「 『惑星JEWEL』 もうだいぶ前になるよね?!」

や「そうだね、でもElysionのほうが古いかなー。ぜんぶ古いんだよね!」

ア「6,7年前には 聞いてた気がするんだけど…」

や「どうだったかな、うーん、忘れてしまった…。 でもこれはもうホントにわかりやすく、流星群が来るっていう秋の夜に、家族で車で星を探検に行ったんですけど、曇ってたんですよね。で、晴れてる所を探して、埼玉のほうまで走ってたんですけど、途中公園に寄ったりして、最後コーヒー買って飲んで、で、夜中に家に帰って来て、そしたらその夜できたんだよね」(笑)

ア「じゃぁ流星群は見てない?」

や「見てない。(笑)でも流星群が降り注いでたんだなぁって、、心に。(笑) だから『目を閉じて見上げるあの子』なんですよ。(笑)目で見えなくても、みんなのウキウキした感じが楽しかったというか。 どこかな、どこかなーって、無いねーって、言って。もう十分その流星群のエネルギーは降り注いでたんだなぁって」

ア「家族に降り注いでたんだね」

や「そういうもんかなぁ、っていう感じで。その夜できた曲だね」

ア「もしかして『UNITY TRINITY』ってとこからできた?」

や「うん、そうだね。なんでなんで?」

ア「ははは。なんかそんな気がする」

や「他の、ドラムがズッタンズッタンって言ってるとこ(注*Aメロと思われる)は、私は基本アドリブから作り始めるから、即興で歌ったテイクだよね」

ア「ほぼ即興でぜんぶできたのかな」

や「そうだね。でもどの曲もそうだね」

ア「難しい言葉使ってるじゃない?」

や「あ、開闢(かいびゃく)? 宇宙開闢ね」

ア「うん『開闢の愛の夢』これも歌ってて出てきちゃったの?」

や「えーと、どうだったかな…。でも開闢って自分にとってはすごく馴染み深い言葉だったので…」

ア「自然に出てきた?」

や「そうだね。辞書とかを開いたりして作ったことは無いかもしれない。『えーっと何かここにハマる言葉は…』みたいな感じではあんまり作らない…」

ア「探して作ったことはない?自然に出てきた言葉しか使わない?」

や「そうだね、そういう風にしてる。 開闢ってよく読む小説なんかには出てくるよね」

ア「宇宙のはじまりみたいな意味だよね?」

や「そうだね、開闢ってすごく好きな言葉。ものすごくイメージが沸く言葉なんだよね」

ア「英語になおせないような感じじゃない?」

や「えっとね、ミルトンの『失楽園』※1っていう素晴らしい小説があるんだけど、たしかそれにも出てきた気がするから英語でもあるとおもうんだけど。ジェネシスみたいな感じかなぁ、、創世記…。でももっと壮大だなぁ」

ア「もっと前でしょう? その創世記のホントのはじまりの瞬間みたいな…」

や「うん、ビッグバンみたいな…そう。私はこの詞の意味はわけわからずに作ったんだけど…、あ、じぶんでは実感を伴ってるものではあったんだけど、でも最近読むとまた違った意味で感じられるというか、ホントにそれを実感する事があったので、あぁホントにそうだったんだなぁ、みたいな」

ア「それはどんな部分で?」

や「たとえば『晴れわたった夜空を目を閉じて見上げる』っていうのも、これもまさに信頼っていうか、そこにあると思って飛び込む、まったく見えてないけどそれを感じてるっていうか。 うまく言えないんですけど…そんな感じ。 見ようとして見るんじゃなくて。 この前に作ったアルバム「神殿の角」はちょうど皆既日食の時にレコーディングしていたんだけど、皆既日食もみんな見たい見たいって言ってたけど見られなかったんだけど、別にそれは見えなくてもいいっていうか。 見えたから運が良かったとか、そういうことでもなくて。 ただ、見ようとすると見えないことってけっこうあるなぁって。 でもね、皆既日食、私も見ようとして島まで行ったんだけど、、太陽は薄っすらとは見えたけど、だけどその行く過程がすごい楽しくて。目で見るんじゃなくて、感じに行ったというか、みんなでそれを楽しみにするのも楽しかったし、ぜんぶ含めて体験だから」

ア「惑星Jewelのジュエルも、偶然ふっと頭に浮かんだ?」

や「そうだった気がする。可愛いタイトルがいいなと思って、キラキラしてるのかなぁって…惑星Jewelになったかなぁ。なんでかな?って思ったけど、いっか。って思って」(笑)

ア「すごく表してると思う。その楽しいキモチとか」

や「そうだよね。その時はね、なぜ私はjewelにしたいんだろうって思ったんだけど、今回あらためて調べてみたら、jewelの語源になってるのはラテン語のjocalisっていう、遊びとか冗談とか。英語のjokeと同じ言葉で、宝物とか楽しい遊びを意味するものらしくて、あぁ『惑星・遊び』かぁって。まさにそう考えるとみんなが付けてるジュエリーっていうのはホントそうだよね、楽しみのためにつけるというか」

ア「ヤヨイちゃん地球バカンス中だしね。遊びに来てるんだもんね、地球に」

や「って言われてますけど、どうなんでしょうか?」(笑)

ア「これガリちゃんがギター弾いてるよね」

や「これもわたしからは何も言ってなくて、勝手に最初にリフを入れてくれて『オレこういうのやりたかったんだよね、ハハ』なんて言って、たしかやってくれたと思います」

ア「ガリちゃん(保刈久明)がギター弾いてるうしろでヤヨイちゃんくるくる回って踊ってたって、ガリちゃん言ってたよ」

や「あぁ私(笑)? 『もっとやれ〜っ!』っていう感じで」(笑)

ア「応援してた?」

や「応援してた」(笑)

 


※1 失楽園 言わずと知れたイギリスの詩人、ジョン・ミルトンのスペクタクルな叙事詩。神による宇宙創成と悪の誕生、天使の戦いが壮大な筆致で描かれる超傑作。 by Yayoi


M03_GILGAMESH

++ヤヨイちゃんから紹介してもらって以来20年以上、私、新居昭乃が堂々と恋してやまない日本が誇るギタリスト、名越由貴夫氏のギターが炸裂する最高にかっこいい曲です。この曲が生まれたきっかけになったのは、不思議な小さな音だったとのこと。。。 by Akino++


_や「その頃、ほとんど毎日のように機材かついで、とあるスタジオに録音に行ってたんだよね。で、ある時ドアをちゃんと閉めてなかったみたいで、スタジオの中に気流が生じて、それがすごい不思議な音になって『ひゅ〜〜』みたいな。その気流がこのメロディを歌ってたんだよね。私そういう音が大好きで、まぁいろんな曲にじつはノイズとして入ってるんですけど、そういう気流とかから、けっこうメロディーが出てきたりするんだよね」

ア「えぇぇーー」

や「(笑)だいたい、いつもそうなんだよね。なんかメロディーがあるよね、気流とか、地下鉄のガタンガタンていうノイズ(※1)とか、食器洗機とか、曲になってるっていうか、その上にメロディーが乗っかってるっていうか。 それでこの『GILGAMESH』のメロディーが『Ah~~~(注*曲のはじめのフレーズ)』っていうのが」

ア「聞こえてきたんだ?」

や「そう。あっという間にどこか別の場所に行ったんだよね。で、それにいろいろコラージュしていって、で、最初はもっと無機質な感じだったんだけど、名越君にギター弾いてもらおうと思って、好きにやってください、みたいな感じで。歌はもう入ってたんだけど。これは古代シュメール語の詩の中から抜粋して、ギルガメッシュ王(※2)のことを讃える言葉というか、それを歌詞にして乗せてみた、感じですね」

ア「ギルガメッシュ王って偉い王様なの?」

や「偉いというか、古代の世界ではすごい人気のあった物語だったんだよね。実在したっていうことがわかってきたんだけど、、すごい個性的な王様。 その個性は、ひとつには、この当時は王になる時にはかならず神から任命されて王になる…神から王権が降りて都市国家ができるんだけど、ギルガメッシュは半分神で半分人間っていう存在で、お母さんが女神なんですよ。だからじぶんのアイデンティティにすごい悩むひとだったというか。どっちでもないし、どっちにも属せないっていう。 だから非常に暴君だったんだよね、若い頃は。人間のことはバカにしきってるし、神に対してもムカツクし、手に負えない力を持ってるし。 そしてそのギルガメッシュは、親友と出会って、一緒に力を合わせて、神とケンカをするっていうか、で、それに勝つっていう。それがギルガメッシュ叙事詩の大きなストーリーのひとつの山場なんだけど、女神と戦争するんだよね。少年マンガみたいなストーリーだよね。行き場のなかった若者が親友と仲間になって力を合わせて」

ア「巨大権力に向かって行く」

や「そう。まさにみんなが夢見てるストーリーというか。だからもう古代で大人気で、ものすごい歌われてたと思うし、いろんな劇としても上演されてたと思う」

ア「最後に繰り返すフレーズがあるじゃない?」

や「うん、えっとね『私は歌う 偉大な女神イナンナのことを 私は歌う とても邪悪にして強大な王ギルガメッシュのことを』 かならず叙事詩の最初にね『私は歌う 何々のことを』って言って吟遊詩人たちがはじめるので」

ア「それが最後に繰り返すリフレインみたいになってるんだ…。 あのー、神様のことを表すのにかならず何かを入れるって、、」

や「そう、d 。名前の最初にかならずちっちゃく d 。 これは発音しない音なんだけど d がついてたら、その次に来るのは神の名前だなってわかるっていう」

ア「おもしろいね」

や「不思議だよね。古代なんだけど今の人間と基本的に変わらない生活をしていたひとたちなので。裁判があって、二院制の国会も持っていて…二院制ですよ! で、学校もあって、音楽学校もあって、薬とか、牧畜、農業、ビールも作ってたみたいだし、都市国家というか、まぁシティーライフを送ってたんですね、シュメール人は」

ア「だいたい、いつ頃の話?」

や「えっと、紀元前1万年とか。紀元前3000年っていう話もあるし、ちょっとわかんない」

ア「きげんぜんいちまんねん?」

や「でもね、シュメール文明のはじまりはその位なんだ。で、その時突然もう暦から何からすべて持っていて、彼らは知識のすべてを神から教わったって言ってて。 だから…どうなんでしょうね」

ア「その神って宇宙人…」

や「そうなんだよね、ナゾが深まる(※3)ばかりで。 この時語られてる神様ってみんな人間らしい神です。感情があるし、人間と混血できるし」

ア「日本の神話とも共通するとこあるね、神様たちが俗っぽい」

や「ホントそう。ギルガメッシュ王の最大の敵となるイナンナ(※4)っていう女神は、愛と美の女神、あんど非常に奔放な女性なので。で、ギルガメッシュがめちゃめちゃ強くなったので、これは無視できないなと、神様たちも手を焼いていて。イナンナはすごく賢いというか、ずる賢いので、じゃぁギルガメッシュをじぶんのもとに引き入れちゃおってことで、出し抜こうとして、他の神のことも。そういう気持ちもあったんでしょう、それで求婚するんだよね『私と結婚しない?』って。そしたらギルガメッシュは『誰がおまえなんかと。おまえと結婚した男がどうなったか知ってるぞ』と。要するに男を食い物にする女なわけですね。結婚したら骨まですすって、ハイさようならって、そういう女性だったんで。そしたらイナンナはすごい怒っちゃって『この世界で一番美しい、愛の女神でもある私をふるとは何事だ!』って怒りに怒って、戦争になるんですよ。すごいよね」

ア「そんなことで戦争になっちゃったんだ」

や「うん。ふられて、戦争」

ア「それでギルガメッシュは親友と一緒に戦うんだね」

や「そう。すごいよね」

ア「そういう叙事詩…」

や「うん。だからギルガメッシュとエンキドゥっていう親友との出会いから、女神イナンナとの戦いとか、それから他に神の森っていう、たぶん杉林なんだけど、それをぜんぶ伐採しちゃう話とかいろんなのがあって、最終的にはエンキドゥが先に死んでしまうので、ギルガメッシュはホントに嘆き悲しんで、7日7晩葬儀をやったとか。 それでも悲しみが癒えなくて放浪の旅に出るんだけど、死への恐怖っていうのもあって、死ぬっていうことを自覚したことがないひとだったから『神は私に神の肉体と知恵と力を授けたけれど、神の寿命は与えなかった』って、じぶんにも死が訪れることを知って、すごくそれを恐れていたっていう。」

ア「晩年は…」

や「人間以上に人間臭いというか、死ぬまで中二病みたいなひとです」(笑)

ア「この曲では、どのあたりを歌ってるの?」

や「これはもう単純なことしか歌っていなくて、まずウヌグの王であるっていうこととか」

ア「ウヌグ?」

や「ウヌグっていう神殿都市の王様だっていうこと」

ア「じゃぁギルガメッシュを紹介してるみたいな?これから壮大な物語がはじまりますよ、っていうような?」

や「そう。ギルガメッシュ叙事詩っていう映画のサントラのオープニングテーマみたいな感じですかね」

ア「とにかく名越君のギターがかっこいいよね」

や「そうなんですよ。さすが名越君。ぜんぶ好き勝手に(笑) 名越君に譜面になってない譜面を渡して、なんだかわかんない構成表みたいな、そういうの渡して、好きにやっちゃってください、みたいな。最初試し弾きしてるのも入ってる」

ア「ほんとに音がかっこいいよー。録ったのは誰なんだろう」

や「あ、わわ私です」

ア「ヤヨイちゃんが?! す、すご〜い。。」

や「これはスタジオでアンプ鳴らして録ったほうがいいと思ったので。名越くんもふだんいっぱいギター録ってもらってるから、マイクの位置もこういう位置にあった気がするって言って、」 

ア「そんな感じでー?!」

や「で、私がプロツー(Pro Tools)回して、録らせていただきました」

ア「すごすぎるー。ミックスは?」

や「ミックスはのりかつくん(※5)がやってくれて」

ア「のりかつくん、よくあそこまでまとめてくれたね! 他の曲もね。最初にのりかつくんに会った時から、ただ者ではないって思ってたけどね。 ヤヨイちゃんとのりかつくんって、私のレコーディングで出会ったよね?『ハレアカラ』でヤヨイちゃんにコーラス歌ってもらった時に、のりかつくん、アシスタントエンジニアで…」

や「うん、素晴らしく安定ののりかつくん。 今回、再収録というか、1回OTOTOYでも配信してるんだけど、コーラスがちょっと増えたりとか、のりかつくんのミックスが変わったりとか、してますね。ぜんぶやり直して。 でも歌は録りなおしませんでした。 いろいろ悔いっていうか、ウーンっていうとこあるんですけど、でも別に、それはその時のものだから」

ア「そうだね、レコーディングもね、その時のライブだからね」



※1「ゆらふ」収録の「LOVE SONG」 地下鉄の走行音から生まれたメロディ。柚楽弥衣は、西暦2000年あたりから、生活音などの色々なノイズがとても美しいメロディに聴こえるようになり、携帯音楽プレイヤーを使わなくなった。

※2 ギルガメッシュ王 紀元前、古代シュメールの王。ながらく伝説上の人物と思われていたが、近年の発掘調査で実在したことが判明。あらゆるヒーロー像の原型のような存在で古代世界を熱狂させた叙事詩の主人公。現代のヒーローの条件をほとんどすべて備え、数々のフォロワーを生み出す。

※3 深まる謎 シュメール文明を宇宙人やスメラミコトと言った日本と結びつけた説など色々ありますが、分からないままにしておいて充分面白いし、神秘的。いかなるものも自分達に無理にこじつけたり、宇宙に起源を持っていく必要もない。砂塵の向こう、遠い時間と遠い国の物語、この星で遊ぶJUWELERにはそれで充分かなー^^

※4 イナンナ 古代オリエントに強大な影響力を持っていた女神、愛と美と戦の女神として、民衆からも一番人気があった。バビロニアではイシュタールとして信仰される。ペルシア帝国のバビロンの都、その象徴とも言える青いイシュタール門はあまりにも有名、古代オリエントを旅する者が死ぬまでに一目見たい!と熱望する、壮麗さで知られていた。

※5 のりかつくん 照内紀雄 エンジニア あきのちゃんに紹介してもらい、限定発売バージョンから、惑星JUWELのメインミックスを担当してくれました。最近はアイドルの作品なども多く手がけている才気溢れるエンジニア。仮面ライダーファン。

by Yayoi


M04_あなたの心に降る雪

++じつは私も30年前から『私の心に降り積もる雪』というフレーズを温めています。美しい気持ちや人柄に触れた時に、それが雪のようにじぶんの心を白く染めて行くというような…。ヤヨイちゃんのこの曲ともとても近い意味合いのような…。「心に雪が降る」というイメージを共有していたことに、少なからずおどろいています。  by Akino ++


や「これは一番古いかもしれない。このアルバムの中で。たぶんね、1999年とかに作った曲だね。 The Power of Amuletっていうアルバムにこれの原型の曲が入ってるんだけど、それは当時の事務所の A&R のひとが、私の声、歌、っていうのをひとに伝えるためにはどういうのがいいのかって、いろいろ実験のトラックを作ってくれて、それにじぶんが好きなように歌うっていうのをやってたんだけど、その中の1曲で。 たしかイエローでライブやるっていうので作ってもらったトラックで、まったく題名すらなかったんだけど、、ライブも即興で歌うっていう感じだったんだけど『次の曲はー』って言った瞬間にこの曲のタイトルが来て『あなたの心に降る雪です』って言ったっていう。」

ア「え〜。。冬だったの?」

や「まったく覚えてない(笑)でもその A&R のひとも、私が『次の曲は』って言った時に、ぜったいアからはじまるタイトルだなって思ったって』

ア「ええーー怖〜い」(笑)

や「だからそういうのって、なんかつながってるっていうか、もう決まってるんだなって思った。曲に意志があって、私はいつもそう思ってるんだけど、曲のほうに主体があるっていうか、私はただそれを出してるだけだなぁって思っていて、だからこの曲は、やって来た時から『あなたの心に降る雪だよー』って言ってたと思うし、で、私は最初わからずにそれを即興で歌っていて、ある時一致したんじゃない?『あなたの心に降る雪だ!』って。 

ア「わかるよー」

や「それがなんか急にもう1度歌おうかなって、なって。で、齋藤 梅生くん(※ 1 )に、これはトラックを作り直してもらったんだけど、ほんとに梅生くんのトラックがすごくて。聴けば聴くほど良く出来てる。私からのリクエストは、前のトラックから『この部品は使ってほしい』っていうのだけで、あとは構成とかもぜんぶ梅生くんがやってくれたんじゃなかったかな。 私はそのトラックに、今のじぶんで即興で歌おう、と思って歌ったものがあって、それが OTOTOY でも配信されて限定で CD-R でも売ってたんだけど。 今回なぜか震災のあとに歌詞がやって来て…、で、このアルバムにちゃんと歌詞入りで入れてみたいなって思ったというか。 だから長いことかかったというか。それからけっこう歌ってますね、ライブとかで」

ア「この形になるまで、それだけ時間がかかったっていうことだね」

や「そうだね。私が最初にこの原型となったトラックをもらった時に、『ラララ( 4 ' 19 ”〜のフレーズ)』っていう最後リフレインで出てくるメロディーとか、『ラララ( A メロのフレーズ)』とかは来ていたんだけど、それがいったい何のことを歌ってるのかっていうのがじぶんでもわからなくてやっていて、で、だんだんわかってきて」

ア「 Maria って出てくるじゃない?それはマリア様のことなの?」

や「そうだね、マリア様っていうか、うん、みんなを守ってる存在というか」

ア「 Santa baby Maria 」

や「うん。聖なるベイビー。聖母子みたいな感じだよ。でもみんなそうかなーみたいな」

ア「人間みんなそうかなって」

や「そう。だからホント震災そのまんまっていうか。私の中ではそういう夜だったんだね」

ア「夜?」

や「うん。14時位に震災が起きたでしょう?そしてその夜、雪がやっぱり、寒い所では降ってたんだよね。で、ぜったいにその日、守りに来てくれてる存在がいただろうな、っておもって。 街の光ももうなくなってしまって、普段だったらね、みんながね、テレビつけたりとか、楽しい団欒があったとおもうんだけど、、じぶんは今後どうなってしまうんだろうって震えてたとおもうんだけど、ぜったいにその守り手の吐息がずっと囁いてるだろうなーっておもって。 私にとっての震災のイメージっていうか。気がつかなくてもいつもそういう存在が…、まぁ息を吸ってるっていうだけでもね、守られてることだと思うんだけど、そしてそれを受け取ったひともいっぱいいるだろうなーって思う。じぶんが守られてる、なにか見えない存在に。もちろん亡くなってしまったひとたちが守られてなかったってことではぜんぜんないんだよ。それはそれぞれの時間っていうものがきっとあるから。ほんとに悲しいこともたくさんあったと思うんだけど、守られてるっていう、そういうことを忘れないでほしいなーっていうか」

ア「うん。その守ってくれる存在がある、、ひいては、ひとはみんなそういう大事な聖なる存在です、っていうことだね」

や「そう。気がついてるひともいるし、そうじゃないひともいるかもしれないし、わからないけど。 でも今はちょっと違って、もうちょっとそこから離れて、もっと明るいというか、もう守られたんだ、っていう感じで…。でもそういうのってすごく淡いというか脆いもので、気がついたら消えちゃうみたいな。だから目に見えないようにしてあるし、普段わからないようにしてあるのかなぁって。触れれば消えてしまうっていうか。雪ってなんかすごい不思議だなぁって思うんだけど」

ア「雪は美しいよね」

や「まぁ寒いっていうか怖いっていうか、そういうのもあるかもしれないけど、これはそういうような雪ではなくて、心に降ってくる雪というか、雪の結晶 」

ア「白く清らかで美しいほうの雪のイメージだね」

や「清らかさって、炎の清らかさもあるけど、すごく冷たい清らかさってあるよね」

ア「積もったら真っ白になるしね」

や「これも保刈久明ギターが炸裂してるんですけど、それも何もたぶん言ってなくて」

ア「ガリちゃんらしい、空間的なギターだよね、明るい雪の感じするよね」


※ 1  齋藤梅生 サウンドエンジニアでありサウンドクリエイター、またパーカッション奏者でもある。サラウンドや立体音響への造詣も深い。ライブでもたびたび演奏者としてサポートをしてもらったり、エンジニアとして依頼をしたり、音全般の高度な感性に柚楽自身、信頼を置いている。

by Yayoi


M05_Eternal

_ ++『永遠』と『 A, N 』のリフレインが印象的なこの曲、サカナくんアレンジの極みを感じます。 そしてヤヨイちゃんの歌が表現するのは宇宙の成り立ちと人の心とのこと、、! マクロとミクロの宇宙空間を漂うようにして聞いていたい曲です。  by Akino ++


ア「これはもうぜんぜん変わっちゃったんでしょ?最初のデモテープから」

や「そう、まったく違うものになったんですね。一時期人気のあったキーボードにプリセットで入ってた音があって、その音がちょっとメロドラマチックというか、ドラマチックな音で、『その音なんかドラマチックでいいじゃん』って言って作ったっていうか。けいさま(※1 )が持ってたキーボードで、ジャムってるうちにこういうメロディーと詞が出てきて、ライブでやったりしてたんだけど、アレンジどうしようかってなった時に、すごくアレンジが問われる曲だなっていうことはわかっていたので、魚さんに頼みたいってなって魚さんに頼んだところ、まったく違うコード進行というか、まったく違う曲になりましたね。すごいスケール感のものになって」

ア「たしかにメロディーはメロドラマに近いものあるよね。それがサカナくんのアレンジによって、ちょっとこう不思議な、現実感のないものになったよね」

や「そう。なんて言うんだろう、わりともっと説明的な曲というか、泣きのメロディーなんだけど」

ア 「たしかに、そいういう意味でアレンジが問われるとこだよね」

や「そう。それでこれは歌をいろいろ実験してて、ま、どうでもいいことなんですけど」

ア「エーッ? 大事なとこじゃない?」

や「あ、そうすか。なんかわざとクセとかを使っているんだよね」

ア「えっなにを?」

や「癖」

ア「あ、クセをつけてみたの?」

や「うん。発音をちょっと汚い音とかを混ぜてみたりして。たとえば『残り火が』のビとかね。その火っていうのの強さを出そうと思ったときに、ビーッとか、ガーッとか。発声とかより音としてかっこいいっていうか」

ア「それ意識してやってみたの?」

や「意識っていうか、そいう風にしないと歌えないっていう感じだったというか。その中に入って歌うと、あぁこれはこういうクセのあるひとなんだなぁっていう」

ア「これを歌うひとはそういうクセがあるひとだったんだ」

や「そう。まぁクセがある状態でこのひとは生きてるひとだっていうか」

ア「なるほどー」

や「なんかすごいエゴがあるっていうか。だから戻れないとかそういうこと言ってる」

ア「これは恋愛の歌なの?」

や「うーん、とも取れるね。でもじゃぁ本質的に恋愛ってなんなのかなっておもうんだけど、たぶん何かに戻ろうとするのと反発するのの作用の、それが恋愛なのかなぁっておもうんだけど、エネルギーの動きというか。だから『あなたの手を、放れてから』っていう、いままさに反発がはじまったっていう感じだね」

ア「反発がはじまった瞬間の歌?」

や「うん、でもそれは永遠でもあり、瞬間でもあるというか。そういう意味では恋愛の歌だし、宇宙的なそういうエネルギーの流れっていうか。まさにそのまま歌詞にしてるけど『放れてから 残り火が、消えるまで 永劫の時へ』って言ってて、でもそれは花が咲いて散る瞬間の出来事。星が生まれて消えるっていうのも、まったく時間性っていうのは一瞬っていうか。光の時間とわたしたちの時間と星の時間はぜんぶおなじではないっていうか」

ア「うんうん」

や「ゼロだったエネルギーが、ゼロから1になる。1に向かって行くというか、全が個になる。その放れるエネルギーのまさにその瞬間というか。だから屈託があるし、屈託がなければ全でいられたのに『私は違う!』って、『私』って言い出した時に、放れる作用が始まるっていうか。そういうことでもあるし。まさに恋愛は何かと一体化したいっていうことだと思うんだけど、一体化し過ぎるとみんなイヤになっちゃってさ、わたしは!って言い出すわけじゃん」(笑)

ア「アタシをなんだと思ってんの!ってね」

や「我がはじまるっていうか、それがすごい面白いなぁっておもって。赤ちゃんが生まれる瞬間かもしれないし。お母さんの一部じゃなくなるっていうか。そう、そういうことだね」

ア「すごいねー。深かったんだねー」(笑)

や「ぜんぜんそういう感じしないんですね?」(笑)

ア「そんなことないよ!」

や「だからさ、あんまり話さないほうがいいのかなって思うんだけど。内容について」

ア「あぁ、でもそれはさ、読みたいひとは読んで、知りたいひとは知ったほうが。聞き方もまた変わってくるし」

や「逆にじゃぁこれはアキノちゃん的にはどういう感じでしたか?詞を読んで」

ア「なんかね、そこまで考えないで聞いてた。でもその葛藤がある感じっていうのは伝わってきてた」

や「(笑)説明でなく伝わるといいんだけど(笑)もっと修行します(笑)そう、まあ、だから『残り火が』っていうのを素直に歌えないっていうか」

ア「うん、ちょっと苦しい感じ。たぶんそういう所から伝わって来てたんだとおもう。歌詞はもちろん読んだけど、チェックの時に。でもその意味を追って読んでるわけじゃないから。でもその感じは伝わってきてた」

や「歌う前にものすごい吸気をしてるんだけど、これもわざわざかなり大きく吸ってるんだよね。これから歌うぞ!みたいな」

ア「そういうエゴを表現したんだね」

や「自然にだけど。やろうと思ってじゃなくて、なぜかこうなった」

ア「歌うひとになったらそうなったんだね」

や「放れて行くひと。でもこのひとは弱いよね、そういう意味では。脆いというか、強いけど脆いというか」

ア「エゴに囚われてるからね〜」

や「遠い目をして言うな(笑)!! でもなんだろう、そういうのも冒険とういうか、人間ならでは」

ア「宇宙と一体になりたいのに、反発する」

や「でもそれを、聞いたひとが感じてくれるかどうかはぜんぜんわからないけど。 歌としてはけっこう気に入ってます」

ア「じぶんの歌としては気に入った歌が歌えた?」

や「うん、そうだね。この形ではこうでしかないというか、自分としてはやりきったなって感じ。すみずみまで。これと、「神殿の角」のLAMENTOは気に入ってるかな、両方ともエゴの範囲だから、可能性とか限定できるから…歌いきれた悔いのないテイク(笑)」

ア「サカナくんのアレンジを最初に聞いたときは?」

や「すごい変わったなーって」

ア「おどろかなかった?」

や「おどろかなかったような気がする」

ア「そうよね、サカナくんにお願いするってことはそういうことだよね」

や「最初に魚さんから返ってきて、堀越さん(※2 )がギターを弾いてくれて、すごいかっこいいフレーズとかいっぱい入ってたんだけど、それがミックスする段階になって、魚さんバッサリ切っていたので、すごい引き算というか、私これハモリのコーラスもたくさん入れてたんですよ、それも一切採用されてなかったので、音数を減らして空間を作ったんだなぁって感じで、でもけっこう好きかな、それは。長く聞くとだんだん違うところが好きになる感じでした。最初に聞いた時は面白いな!っておもった。まったく違うものを聞いてるんだなぁって魚さんは。それがすごい嬉しかったね。コードがない感じだもんね」

ア「そうだよね、ノーコードみたいな」

や「それが、あぁこういう風になるんだなぁっていう。ある意味リミックス的な感じというか」

ア「サカナくんね、いま TWO WURLI AND もだけど、ほぼワンコードとかひとつのフレーズだけで1曲最初から最後までそれを通して、その中でストーリーが出来上がって行くっていうような曲の作りかたをしてる気がするんだけど、これもそれに近いのかなって。あまり感情が高ぶらないまま音はずっと進んでて、それでもすごく機微があるっていうか _ ヒダが折り重なってて、微妙な表現ていうかね、そこが職人芸だとおもう」

や「そうだね、なんか水墨画みたいな。色が一色っていうか」

ア「ホントに限られた条件の中で最大限の表現をしてるっていう。宇宙の温度の無さみたいなのも出てるもんね」

や「そう!宇宙空間って感じだよね。全体的にそこに光や惑星やブラックホールとかが通過して行く感じが出てるかな」

ア「じぶんが宇宙サイズになったように感じられるよね」

※1 けいさま(大久保敬) 様々なアーティストのサポートも手がけるキーボーディスト/作曲家。「神殿の角」「惑星JUWEL」製作中のライブ、「Equilibrium」という即興ユニットを共にやっていた。ライブで映える即興性の高いプレイが魅力的。

※2堀越信康 ギタリスト 新居昭乃のライブでもおなじみのスーパーなギタリスト。このアルバムでも、多彩、かつエモーショナルなギターでEternalの他、CORAZON,The Lovely bonesという楽曲で素晴らしい演奏を炸裂させてくれました。

by Yayoi


M06_CORAZON

++アルバムの帯に書かれている『彷徨うもの、気高いものよ!」はこの曲の歌詞から来ています。個人的にはメロトロンの音が出てくる瞬間のところ( 0 ' 57 ”あたりと 2 ' 13 ”あたり)がたまらなく好きです。堀越さんのギター、立花さんのドラムが痺れます。右と左から別のドラムが聞こえてくるのに自然に聞けてしまう。。細海魚アレンジ、すごいです。 by Akino ++

 

ア「これもサカナくんだよね」

や「そう CORAZON も魚さん。もともとの曲の構成とかコード進行とかもそんなに変わってないような気がするんだけど、まさかこんなにロックなものになるとおもってなくて、逆にワタシ的にはもっとぜんぶ轟音の中みたいな印象だったんだけど。ずーっとディストーションギターが鳴ってるみたいな。そういう心象的なものになるのかなぁっていう感じで最初作ってたんだけど、これも魚さんにやってほしいって思って送ったら、おもいがけないロックナンバーになっていたというか。すごいかっこよくなっていて、ホントにこれも大好きなんですけど」

ア「あのベースのフレーズも印象的だよね」

や「私は90年代が一番、 CD とか死ぬほど買ってたと思うんだけど、その時に聞いてたものの好きな感じがぜんぶ入っていて。。! サカナさんと『何聞いてた』とかそういう音楽の話は一切してないんだけど、私の大好きなものになってました」(笑)

ア 「魔法のようだね」

や「そう。魚さん聞いたことあるかどうかわからないけど、ブー・ラドリーズっていうバンドが昔『 Lazarus 』ていうすごいかっこいい2枚組のアルバムを発表してるんだけど、私ぜんぜんマニアじゃないので、これ聞いたひと「え?ぜんぜん違うよ」って思うかもしれないけど、そういう私の好きなブリティッシュなロックのテイストも入りつつ、ものすごい神なタイミングでいろんなものを配置してくれて、、、ありがとう!っていう」(笑)

ゆ・「神なタイミング」(笑)

ア「さすがだよね」

や「これ北海道でもすごい聞いてたんだけど、車の中で。そしたら北海道の葉っぱとか草とかそういうのがすごくイメージとして出てきて、やっぱりひとの作る音っていうのは、そのひとの中にあるものなんだなぁって思って。 あ、これ魚さんの中の、草とか木とかを感じながら育った背景っていうのが、この曲の音になってるんだなぁって、すごく思った」

ア「へぇぇ。。それはおもしろいナ。音自体はすごいロックじゃない?だから草とか葉っぱとかを表現してるようには聞こえないよね。でもその背景にそういうものがあるっていうのを感じるってことだよね」

や「北海道の自然の、その葉っぱとか草とか空き地とかが、すごいこうワーッて出てくる感じっていうか。だから自然が魚さんの音楽には入ってるんだなぁって、、すごく思ったねー」

ア「この CORAZON って…心か…、歌の内容とも一致するものだった?」

や「あ、その音が?そうだね。  ESPRIT と CORAZON 。 ESPRIT は精神。 CORAZON は心とか魂とか。でも日本語にできないニュアンスがあるみたいで。なんというか大事なものというか、そういうものみたいなんだけど。私は昔からこの CORAZON っていう言葉が好きで、日系ブラジル人のひとに『 CORAZON 』っていう言葉がすごく好きなんだけど、どういう気持ちでその言葉を母国語のひとたちは使ってるのかって聞いたら、説明はやっぱりできないと…うん。心とか魂なんだけど、日本語が意味するものとは違うということで。でもなんかその響きが好きで」

ア「うんうん」

や「あらためて説明しようとするとよくわからないんだけど、これは、、『私は違うんだ! NO !って言って放れて行ったひとが、なんて言うんだろう…こう彷徨うわけですよね。でもその、私は違う!っていう、 NO !っていうのって、どっちかっていうと反発とかそういうものなんだけど、そういうのって私どこか何か気高さもあるなと思って。その働きがあるから宇宙は回っているというか。 YES と NO の中で、 NO と言える強さというのは、すごく儚いなぁっていう気もしていて」

ア「儚く気高いもの…」

や「このアルバムの中に獅子っていう言葉が期せずして2つ入っているんだけど、動物ってぜんぶ人間の中にあるものの象徴だなぁって思うんですけど、獅子の存在ってなんだろうって思うと、やっぱり吠えるわけだし、力だったり勇気だったり。だから『違う』って言うのもすごい勇気が必要で、またそれは YES の勇気と違う勇気なんだけど、『違うんだ!』って言った魂が彷徨いながら、じぶんの弱さを感じつつね。そんな感じで。」

ア「獅子は気高く『NO』って吠える存在なんだね」

や「でもこの最後にぜんぜん関係ない部分が出てきて、もう溶け始めてるひとがいるっていうか。うん…。まぁ中二病の歌詞ですよね」(笑)

ア「えー、これも?」

や「じぶんが中学生の頃よくこういうことを考えてましたね。校庭を歩きながら」

ア「校庭を」(笑)

や「そういう存在がじぶんの中にいて詩を書いていたね。特に一番感じるのが春かな」

ア「溶け始めてるひとの存在を」

や「あ、吠える人と、溶け始めてる人と、この詩の世界観と言うか……。冬っていう死の状態から生に向かってバーンって飛び出して来る、わけのわからないパワーみたいなものが必要で、そうすると眠ってたものが呼び覚まされるというか。そういうこう生死の境目みたいな、そういう感じ。」

ア「その境目をスローモーションで見るような音になってるよね」

や「そのテーマの曲はいくつか書いていて、ライブで昔よくやっていたのは『さすらいのハスラー」っていう曲で(笑) それはただその時おもいついたアメリカの地名をずっと言ってるだけなんですけど、たぶん19才位からよくライブで歌ってて」

ア「それとおんなじような歌ってこと?『さすらいのハスラー』と、姉妹曲?」

や「私の中では姉妹曲であり、進化版。もうちょっと成長したかなみたいな(笑。 大人になってからアメリカに行ってドライブしてても思ったけど、すごい、広い!って感じだよね」

ア「アメリカ?」

や「そう。その時はその広いっていうのがきっとさすらうってことになったんだなぁって」(笑)

ア「だからアメリカの地名を並べてたんだね(笑) ところで※1立花さんのドラムね、あれはトラックを送って向こうで叩いてもらったの?」

や「デモの段階で。もはや昔すぎて、どんなデモを送ったのかも覚えてないんだな」(笑)

ア「立花さんももう昔すぎて、じぶんがどれを、どれがじぶんのドラムなのかわからないって…」

や「そうなんですよ、、申し訳ないって感じで…」

ア「でもね、よかったね、聞いて喜んでもらえて」

や「ホントですよ。魚さんのアレンジのおかげで!」

※1 タチバナサトル、るーさん、種ともこさんが出演したイベントを見に行ったらるーさんが出ていて、感性そのままのドラムが素敵だったのですごいかっこよかったですよぉ〜とお声かけし、ドラムを叩いてもらってしまいました!(良く突撃してるなあわたし)

by Yayoi

や「というわけで、惑星JUWEL〜Beyond the Galaxy 対談前半、やっと終了です。途中の2015年8月のはじめ、柚楽弥衣の家族が脳梗塞で倒れるというイベントがあり、毎日マッサージやリハビリの準備運動を介助してたら利き手の親指を使いすぎで負傷したりと、作業中断してしまいました。
申し訳ない!ドキュメンタリーだし中々ないことだと思うので書いときますね。
人生何が起きるかわからない!惑星JUWELISTはどんなこともやっぱり楽しめてしまうのでした。
昨日、あまりにも濃いコーヒーと甘いケーキをすきっ腹に摂取した結果、二年に一回の重度の偏頭痛(偏頭痛って軽い梗塞が起きてたりもするそうです)を起こし、たすけてぇ!とのた打ち回ったんですけど、家族は梗塞起こして、もっと苦しかったんだろうなぁと思いを馳せました。
惑星JUWELISTな皆さん、心と体は魂の望みどおり、正しく使いましょう笑、皆さんの健康と幸せをお祈りします!
アキノちゃんありがと〜!!
ではでは完結編はバイオスフィアのページでどうぞ!」